級友達が静かに静かにお墓ごっこや日陰ぼっこをしているのを尻目に、平太は更に木陰の奥へと向かう。
学園の中でも一際静かで、殆ど誰も来ないこの場所は平太のお気に入りの場所だ。
今日もそこで膝を抱えて座り込む。こうするととても落ち着くのだ。
ガサリ…
普段ならまったく物音のしないこの場所で不意に木の葉のこすれる音がして平太が身をすくませた。
「平太?」
しかしそれ以上に、頭の上から降ってきた声に驚いて見上げれば、同じように驚いた顔をした6年生の先輩の顔。
「食満先輩…」
どうしてこんなところに居るんだろうと疑問に思いかけて、6年生がこの学園隅々まで知っていても不思議じゃないと思い直した。
自分しかしらない秘密の場所だなんて思い上がりもいいところ、きっとこの先輩も何か用事があって来たに違いない。だったら邪魔なのは自分だと、そう考えを巡らせて。
「あ、あの...すいません」
やっとそれだけを言ってその場所を離れようとしたのに。平太を見て何か思案していた食満はそれよりも先に踵を返そうとしたのだ。
「いやこっちこそすまん。先客が居るとは思わなかった。邪魔して悪かったな」
平太はあわてて食満の服の裾を引っ張ってしまう。そして足を止めた食満にまた我に返って顔をますます青くしたのだが。
ふっと笑った食満がしゃがみこんで平太の目線に合わせてぽんぽんと頭を軽く叩いてくる。
何も言えない平太に代わって、まるで心を読んだかのように。
「ここって、誰も来ないし落ち着く場所だよな。平太の秘密の場所なんだろ。邪魔してごめんな」
何で…と言いかけた口は、食満のにっと笑った顔に押しとどめられた。そっと顔を近づけて内緒話をするような小さな声で。
「実は俺も1年の頃にここを見つけて、今の平太みたいにここでじっと座ってたんだ」
「そーなんですか?」
「ああ。いいこと教えてやろう。ここはな、小平太も知らない位秘密の場所なんだぞ」
いつも学園中を駆け回って知らない場所などなさそうな人物を思い浮かべて平太は目を丸くした。
「良く見つけたなー平太。俺も驚いたぞ。もしかしたら俺たち似てるのかもな」
おんなじ場所を見つけて、そこが一番落ち着ける秘密の場所だなんて。
何気なく言ったのかもしれない食満の言葉に自分でも驚くくらい平太は嬉しくなってはにかむような笑顔を見せる。
「あの…じゃ、一緒に落ち着きましょう…先輩もここに落ち着きに来たんですよね?」
言ってから何を口走ってるのかと自分を恥じた。自分が退くと言わなければいけないのに。
それでも、平太の言葉に驚いたような顔をした食満はにっこりと笑ってこう言ったのだ。
「いいのか?」と。
そうして、それからしばらく、同じ場所で何を話すわけでもなくただ黙って座り込んで。それでいて沈黙が重くなる事もないとても落ち着いた時間が流れた。
あまりの心地よさに、船を漕ぎ出した平太を、くすりと笑って食満がそっと一年長屋に運び込むまでその穏やかな時間は続いたのだった。