今日も今日とて喜三太は肌身離さぬなめくじつぼを抱えて走り回っていた。
「はにゃー、もー毎日暑くてなめさんたちが元気ないよお〜」
散歩をさせてもあまり元気が良くないと嘆く。
いつもならなめくじが沢山いる場所へ行ってもこの暑さのせいなのかちっとも見つからないので、喜三太は少し意気消沈気味であった。
「あ、喜三太丁度良かった」
「ほえ?食満先輩?どーしたんですかあ?」
丁度そこに通りがかった食満に声を掛けられて喜三太は振り返る。何か委員会の呼び出しかなと思ったが、笑顔で手招きをされて近寄ると眼前にすっと手を差し出された。
「あ、なめさーん」
食満の指先には喜三太の大喜びする生物。
「さっき見つけたんだ。こいつ見たら喜三太の事思い出してなあ」
「ありがとうございまーす。せんぱいもなめさんすきなんですね」
無邪気な喜三太の問いかけには苦笑い。
「いや…好きっていうか…喜三太が喜ぶだろうと思ってな」
「はいっうれしーです」
一緒に盛り上がってくれるほど好きではなかったのは残念だが、嫌悪感を持たれず、ましてやこうして拾ってきてくれるなんていうのはとても嬉しい。
にっこりと笑って言えば、苦笑いだった食満の顔も同じくらいの笑顔になった。
「でも、どこにいたんですかー?さいきんあんまりみつからなくってさみしかったんですよ」
「ん?ああ…あまり一年生は行かないだろうなあ…」
そういってこそっと耳打ちしてくれた場所は、確かに今まで奥へ行こうだなんて思いもしないところ。
建物の隙間…までなら喜三太も探しには行くが、隙間の裏の更に隙間のその奥だなんて。でも確かにそこなら沢山なめくじが居そうだ。
「ああいうところは人目に付かないし湿気も多いから、気付かないうちに壁とか傷んでる事があってな。ついつい目が行ってしまうんだ」
そんな説明を聞いて喜三太はやっぱりさすが用具委員長だなあと素直に感心をした。
「すごいですねー。ぼくも、せんぱいみたいなりっぱな用具委員になりたいです」
その言葉に酷く嬉しそうな顔をした食満であったが、続いた台詞に盛大に笑い出す。
「そしたら、なめさんのいる場所を上手にみつけられますよね」
何故笑われたのかは分からなかったけれども。
笑いながら背中を叩かれて、頑張れと言ってくれたので、良い子のお返事をしておいた。
「さっきの場所、散歩させるのにも良いと思うぞ。壁の補修はしてあるから行ってみるといい。まだなめくじが居るかもしれないし」
「はあい。ありがとうございます」
なめくじツボを抱えて数歩走り出してから、くるりと振り返る。
「せんぱーい!もしなめさん居そうなほかの場所で、かべがこわれてるとこみつけたら、ほうこくしますねー!」
「おうっ!頼んだぞ!」
今度こそわき目もふらず駆け出していった喜三太の後姿に中々将来有望だと手を振る食満だった。